助手席にピアス

夕方の道路は数メートル先まで、車の赤いテールランプが数珠つなぎになっている。いつもならイライラする渋滞も、桜田さんと一緒に過ごせる時間が増えたと思うと、自然と苛立ちも感じなかった。

会えない数日間を惜しむように、私は口数の少ない桜田さんとの会話を楽しんだ。



電車を乗り継ぎ、実家に辿り着いたのは日付をまたいだ夜中だった。おばあちゃんの仏壇に手を合わせ、帰省の報告をするとお風呂に直行。

一日の疲れを洗い流すと自分の部屋に行き、桜田さんに無事に実家に到着したことをメールすると、あっという間に眠りに落ちたのだった。



東京のワンルームマンションでひとり暮らしをしている私にとって、久しぶりの実家はなんとも居心地がよかった。

昼間はリビングでこたつに入り、家族とまったりしながらテレビを見る。夕方になると母親と会話を交わしながら近所の商店街に買い物に行き、肩を並べてキッチンに立った。

そして、去年まではそこにいたはずのおばあちゃんがいないことを、寂しいと思いながらテーブルで夕食を囲む。食事の後片づけを終えると、リビングで家族水入らずの時を過ごした。

そんな、のんびりとした二日間を終えて迎えたのは大晦日。紅白歌合戦を見ながら年越しそばを食べるのが、実家の大晦日の過ごし方。

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