助手席にピアス
その大晦日の我が家に、あたり前のように琥太郎が姿を現した。
「はい、琥太郎くん。たくさん食べてね」
「おばさん。ありがと。んじゃ、いただきます!」
自分の家でも食べてきたらしいのに、琥太郎は母親に出された年越しそばを見事に完食すると、こたつに入り紅白歌合戦を見る。そして紅組か白組か、どちらかの勝利を見届けると、こたつから立ち上がった。
「さてと、雛。行くか?」
毎年、変わることなく繰り返されてきた年末の光景。けれど今年の私は、素直に琥太郎と一緒に初詣に行く気にはなれなかった。
「琥太郎。寒いから初詣に行くのはやめておく」
クリスマスイヴの一件を思い出すと、琥太郎とふたりきりになるのは、なんとなく気まずい。
だから寒さのせいにして、毎年恒例の初詣をパスしようとした。それなのに……。
「雛子。琥太郎くんが誘ってくれているんだから、いってらっしゃい」
「う、うん」
母親のお節介な言葉に、初詣に行くことを断り切れなくなってしまった私は、渋々とこたつから出る。そして、自分の部屋にコートを取りに行くと「いってきます」と琥太郎と一緒に家を後にした。