助手席にピアス
遠くに響く除夜の鐘を聞きながら、初詣のために神社に向かう。朔ちゃんが帰省した一昨年は三人で歩いたこの道も、今年は琥太郎とふたりきり。
「琥太郎、朔ちゃんもこっちに帰ってきているんでしょ?」
「ああ。莉緒さんと一緒にな」
気まずさを隠すように、朔ちゃんの話題を持ち出す。
「そうなんだ。初詣には行かないの?」
「明日、親父とおふくろと一緒に行くってさ」
「ふうん」
朔ちゃんは高校の同級生である桜田さんが、奥さんと別居していることをきっと知っている。
真面目で優しい朔ちゃんに不倫をしていることを知られたら、きっと私は怒られるよね……。
私と桜田さんとの恋は、誰にも祝福してもらえないものなんだと痛感すると同時に、朔ちゃんと莉緒さん。そして朔ちゃんの弟でもある琥太郎には、桜田さんと付き合っていることを絶対に知られてはならないと決断をした。
キンと冷えた空気を頬に受けながら、静まり返った神社に向かう道に足音を響かせる。
「雛、俺が置いていったクリスマスケーキ食ったか?」
「え? あ、ううん。あの後、ちょっと色々とあって……ごめん」
「そうか」