助手席にピアス
「けじめってなによ! クリスマスイヴの夜もそうだったけど、琥太郎の言っている意味、全然わからないよっ」
「……ケジメって言えば、普通わかるだろ? クソッ! 鈍感な雛にこんなことを言った俺がバカだったよ」
私の両肩から手を離した琥太郎は、プイッと背中を向けると足早に神社に向かって歩き出す。このまま、琥太郎に背中を向けて家に帰ることもできた。
でもポケットに手を突っ込みながら、背中を丸める琥太郎の後ろ姿をみたら、何故だか放っておくことができなくて……。
琥太郎の後を急いで追った。
地元でも割と有名な神社は、深夜にもかかわらず、毎年人でごった返している。人波に押されるように参拝をするために列に並ぶと、指先に「はぁ」と白い息を吹きかける。そして、寒さでかじかんだ手をこすり合わせた。
「なんだよ。雛、手袋してこなかったのかよ」
「だってお母さんが急かすから……」
「ったく。いい歳して親のせいにするなよな。ほら、こうすれば寒くないだろ?」
琥太郎は有無を言わさず私の手を握ると、自分のモッズコートのポケットに突っ込む。
幼い頃、数えきれないほど繋いだ手は、たしかに同じ大きさだったはずなのに……。
琥太郎の手は、私よりはるかに大きく厚くなっていた。