助手席にピアス
初詣の毎年のお楽しみは、運試しのおみくじを引き、屋台のたこ焼きを食べること。年越しそばを食べ、深夜に粉物のたこ焼きを食べたら確実に太るとわかっていても、ハフハフと白い息を吐き出しながら食べるたこ焼きの魅力には勝てない。
「あ、琥太郎。ソースが口の横についちゃってるよ」
「ん? ここか?」
「違う。もっと横。ああ、もう! そっちじゃないって!」
口もとについたソースの跡をちっとも拭えない琥太郎に苛立った私は、スッと手を伸ばすと指でそのソースの跡を拭う。そして、そのまま指についたソースを舌で絡め取った。
「あ……」
「なに?」
「……なんでもねえ」
琥太郎は私から視線を逸らすと、無言のままたこ焼きを食べ続ける。
初めのうちは、どうして琥太郎が声をあげたのかわからなかったけれど、今頃になって、恋人みたいな行動を取ってしまった自分に恥ずかしさを覚えた。
だから私も黙ったまま、たこ焼きを口に運んだ。
「雛。風邪でもひいたら大変だから、ほら。手を貸せ」
参拝を待っている時と同様、琥太郎のポケットの中で指を絡ませながら、新年を迎えた元日の夜中に実家に向かって足を進める。