助手席にピアス

いつもなら温かい布団にくるまりながら、スヤスヤと夢を見ている時刻。

きっと実家に着いたら、あっという間に眠りに落ちるだろうな……。

そんなことをぼんやりと考えていると、琥太郎の意味不明なことを言い出した。

「雛。俺って昔からタイミングが悪いんだ」

「タイミング?」

「ああ。熱が出て学校を休んだ日に限って給食にプリンが出たり、自販機で飲みたかったジュースが売り切れだったりさ」

琥太郎がなにを言いたいのか、私にはさっぱりわからない。キョトンとしていると、琥太郎はさらに話を続けた。

「彼女と別れてケジメをつけたのに、雛に彼氏ができてたりさ……」

「え?」

私の予想を遥かに超えた琥太郎の言葉に、衝撃を受けた。

「クリスマスイヴの電話、アイツからでさ……。雛に自分の思いを伝える前に、きちんとケジメをつけようと思って地元に戻ってアイツと別れたんだ」

クリスマスイヴに琥太郎が言った『ケジメをつける』という言葉の意味をようやく理解する。

そして二十四年間も幼なじみをしていている琥太郎の口から、この後どんな言葉が紡がれるのか、いくら鈍感な私でもわかってしまった。

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