助手席にピアス
予約席の座敷に案内された私たちはメニューを見ながら、この店の一番人気の塩ちゃんこ鍋を注文することにした。
白菜と水菜、ささがきごぼうに椎茸。そして肉団子に油揚げなどの具材がグツグツと煮立ってきた鍋からは、いい匂いが漂ってくる。
「うわぁ、おいしそう!」
「はい、雛子ちゃん。どうぞ」
「ありがとう」
鍋奉行に変身した朔ちゃんが取り分けてくれた器を受け取ると「いただきます!」と声を揃える。そしてハフハフしながら、ちゃんこを口に運んだ。
「ん~! おいしい! 幸せぇ!」
「相変わらず雛子ちゃんはおいしそうに食べるね。それで琥太郎となにかあった?」
朔ちゃんが唐突に鋭いことを言うから、私は口に入れた肉団子を喉に詰まらせそうになる。ケホケホとむせかえる私の背中をトントンと叩いてくれたのは、優しい莉緒さんだった。
「雛子ちゃん、大丈夫?」
「さ、朔ちゃんがいきなり変なこと言うから!」
小皿とお箸をテーブルの上に置くと、恨めしく朔ちゃんを見つめる。
「変なのは琥太郎だよ。お正月だっていうのに大好きなお雑煮のお餅を四個しか食べないし。今日だって雛子ちゃんも誘ったから一緒に行こうって言っても、食欲ないから行かないって言うんだ」