助手席にピアス
真面目な顔して、お餅を四個しか食べないと言う朔ちゃんに思わずツッコミたくなった。けれど心あたりが大ありだった私は、お茶を飲んで気持ちを落ち着かせる。
「雛子ちゃん、琥太郎に告白された?」
「えっ? もしかして琥太郎から聞いたの?」
「やっぱりそうなんだ。へえ。琥太郎の奴、ようやく言ったのか」
朔ちゃんは、顎を手で擦りながら、口もとに微かな笑みを浮かべる。
そう、私は朔ちゃんの誘導尋問に、まんまと引っかかってしまったのだ。
「朔ちゃん! 私を騙すなんてひどい!」
「騙すなんて人聞きが悪いな。それに琥太郎の気持ちなんか、ずっと前から知っていたし」
「え? そうなの?」
琥太郎の気持ちを一日前に聞いたばかりの私は、驚きながら朔ちゃんを見つめる。
「琥太郎の態度を見ていれば、雛子ちゃんのことが好きだってすぐにわかるよ。莉緒だって気づいていたよね?」
「え? 莉緒さんも?」
莉緒さんは澄んだ瞳を泳がせながらも「ええ」と遠慮がちに答えた。
琥太郎が事あることに私のことを『鈍感』と罵る理由をようやく理解する。
「雛子ちゃん、もしかして琥太郎をフッた?」
「……フッたというか。私、今、付き合っている人がいるの」
何故かにこやかな笑みを浮かべる朔ちゃんに向かって、現状を簡単に説明した。