助手席にピアス
『兄貴への最高のプレゼントになるんじゃねえかな、って思ったんだよ』
琥太郎のこの言葉がなかったら、今頃私は抜け殻のような毎日を過ごしていたよね……。
琥太郎の屈託のない笑顔が頭に浮かび、何故か胸がキュンと締めつけられるような感覚に見舞われる。
「じゃあ、真澄、雛子ちゃん、よろしく」
「ああ」
気づけば朔ちゃんと莉緒さんは、ガトー・桜を後にしようとしていた。
「朔ちゃん!」
咄嗟に朔ちゃんを呼び止める。
「ん? なに?」
「あの……琥太郎は元気かな?と思って……」
琥太郎と最後に会話を交わしたのは、実家から東京に戻った日。あの時の私は、変に琥太郎を意識してしまい、たいした会話もせずに携帯を切ってしまった。
あれから数週間が過ぎた今、琥太郎はどうしているのかと、無性に気になってしまったのだ。
「雛子ちゃん、琥太郎のこと気になる?」
「う、ん。だって琥太郎は幼なじみだし……」
言葉に詰まる私を見て、朔ちゃんは口もとを上げる。
「本当にそれだけの理由?」
「朔ちゃん……どういう意味?」
朔ちゃんがなにを言いたいのかわからない私は、首を傾げた。