助手席にピアス
「青山さん、落ち着いて。取りあえず課長に変わってくれるかな?」
「は、はい」
電話を保留にすると事務課長のもとに駆け寄り、自分が入力ミスをしたことを手短に伝える。
「もしもし-----」
電話を取った課長のデスク前で、ことの成り行きを見守ることしかできない自分が歯痒かった。
「鈴原さん、全粒粉十キログラムを九袋、当日出しすることになったから、伝票を発行して」
「はい」
樋口さんとの会話を終わらせた課長は、私ではなく鈴原美菜さんにこれからの指示を出した。こんな時でも、私は謝ることしかできない。
「課長、本当にすみませんでした」
「ああ、これからは十分気をつけて入力すること。それから当日出しの仕方も、先輩の鈴原さんに教わって」
「はい」
深々と頭を下げると、急いで鈴原美菜さんのもとに向かった。
当日出しの伝票の発行方法を教わり課長の承認印をもらうと、一階の倉庫に向かう。
「鈴原さん、今回は本当にすみませんでした」
「ううん。気にしないで。ただし、同じミスを繰り返さないこと。ね?」
「はい!」
入力ミスで届かなかった九袋の全粒粉は営業の樋口さんが出先から戻り、スカイホテルベーカリーに配達することになった。
一階の倉庫に着くと、管理課長に今までの経緯を説明して伝票を渡す。
自分のミスのせいで、大勢の人に迷惑をかけてしまったな……。
力なく肩を落とすと、残りの仕事をするために事務所に戻った。