助手席にピアス
Sweet*16
バレンタイン
桜田さんとの感傷的なデートを終えると、すぐに朔ちゃんにコールをした。
「もしもし」
「あ、朔ちゃん? 今、大丈夫?」
「ああ。大丈夫だよ。雛子ちゃんが僕になんの用事かな?」
お正月に朔ちゃんが口にした『あの出来事』が明らかになった今、きちんと話をしなければいけないと思った。
「あのね。今日、桜田さんから高校時代の話を全部聞いたの。朔ちゃん、辛いことを思い出させてごめんなさい」
私のせいで、多感な思春期の悲しい『あの出来事』を思い出させてしまったことを謝った。でも朔ちゃんは、ちっとも気にしていないようにクスッと笑う。
「謝る必要はないよ。僕は雛子ちゃんが真澄と仲直りするきっかけを作ってくれたと思っている。感謝したいのは僕の方だよ。ありがとう。雛子ちゃん」
「朔ちゃん……」
まさか朔ちゃんから感謝されると思ってもみなかった私は、驚きながらも心がぽわっと温かい気持ちに包まれた。
今さらだけど、こんなに素敵な朔ちゃんを射止めた莉緒さんに対して、ちょっぴりヤキモチを妬いてしまう。
「雛子ちゃん、今度の土曜日なんだけどなにか予定ある?」
急に話が変わり、戸惑いながらも返事をする。
「土曜日は桜田さんのお店の手伝い」