助手席にピアス
そう言って目の前に差し出されたのは、白地の包装紙に赤いいちご模様が印刷されている、いちごミルクの飴。
社会人の男の人と、かわいらしいいちごミルクの飴のミスマッチさがおかしい。さっきまではメソメソ泣いていたくせに、つい小さく笑ってしまった。
さりげない彼の優しさをうれしく思いながら、手のひらに置かれたいちごミルクの飴を見つめた。
「俺さ……泣き顔がかわいい女の子と、笑顔がかわいい女の子が好きなんだよね」
「……?」
突然、仕事とは関係ない話になり首を傾げる。
「青山さんって、彼氏いるの?」
どうしてこんなことを聞くの? まさか……。
ドキドキと高鳴る鼓動を誤魔化すためにバッグを胸もとに抱え込むと、首をフルフルと左右に振った。
「ああ、よかった。じゃあさ、青山さん。俺と付き合わない?」
突然の告白に、瞬きをするのも忘れるくらい驚いた。
でも……。
実はハニーフーズに入社をしてすぐに、仕事ができて気さくな彼のことが気になっていた。だから彼に嫌われたくない一心で、待ち伏せをしてミスしたことを謝ったのだ。
でも、まさか『付き合わない?』なんて言われるなんて……。
驚きが、瞬く間に、うれしさに変化していく。いちごミルクの飴を握りしめると「はい」と返事をした。
「うん。じゃあ、今から青山さんは俺の彼女ってことで、よろしく」
大きな手で頭をポンポンと撫でられた私は、樋口亮介さんの彼女になれた喜びに包まれたのだった。-----