助手席にピアス
どんどん小さくなっていく地上の建物や車や人が、まるでおもちゃのように見える。そして、目には見えない透明な階段を上がっているように、徐々に青空に近づいていく不思議な感覚にテンションが上がった。
「朔ちゃん! 富士山ってここから見えるの?」
「うん。もっと高く上がったら見えると思うよ」
「うわぁ、楽しみ!」
ようやく初体験の観覧車に慣れた私は、向かいの席に座っている朔ちゃんに視線を移す。すると、朔ちゃんはうつむきながら、笑いをグッと堪えていた。
「朔ちゃん、どうしたの?」
「いや、やっぱり雛子ちゃんは雛子ちゃんだなっと思ってさ」
「それってどういう意味?」
本当は聞かなくてもわかっていた。
観覧車に乗ったくらいで、はしゃぐ私を子供っぽいって言いたいんだって……。
でも朔ちゃんは、私が予想していたこととは違う言葉を口にした。
「雛子ちゃんみたいなかわいいい妹が欲しいって意味」
「私も! 朔ちゃんみたいな素敵なお兄さんが欲しい!」
たしかに朔ちゃんは初恋の人だけれど、今となっては私の頼れるお兄さん的存在だ。
だから、その思いを素直に口にしたのに……。