助手席にピアス
亮介が買ってきてくれたパティスリー・ミノリのケーキを半分ずつ食べることにした私たちは、隣に並ぶとフォークを手にする。
「亮介、食べさせてあげる。はい、あ~んして」
「あ~ん」
外では人目を気にして絶対にできないことも、ふたりだけの空間なら恥ずかしくない。
「亮介、おいしい?」
「ん。うまい。じゃあ、次は雛子の番。ほら、口を開けて」
亮介に言われるがまま口を開けると、ショートケーキの甘い風味が広がる。
ケーキって見た目も綺麗だし、食べてもおいしいなんて、最強の食べ物だよね……。
「う~ん! おいしい!」
心の底から声を上げると、亮介はクスクスと笑い出す。
「はい。もう一回、口を開けて」
「えっ? 次は亮介の番で……ぅぅん」
言葉が途切れたのは、強引にケーキを突きつけられたから。
お互いの口にケーキを運び合い、アールグレイの紅茶を味わう。そんな至福のひと時は残念ながら、あっという間に終わってしまった。
「亮介、ケーキとてもおいしかった。ありがとう」
「どういたしまして。カレーもケーキも食べたし、あとは雛子を食べるだけだな」
「え? ぁ……」
近づいてくる亮介の唇を受け入れるために瞳を閉じる。今日のキスはふんわりと甘いケーキの味。
「雛子の唇、すごく甘いんだけど」
「亮介の唇だって、すごく甘いよ」
ケーキよりもおいしいキスをもっと味わいたくて、さらに深く唇を絡ませ合う。そして唇だけでは物足りなくなった私たちは、お互いの身体を堪能するためにベッドに移動した。
「亮介」
「なに?」
「大好き」
「俺もだよ、雛子」
その夜、私は……。
身体の奥深い場所で亮介を感じながら、何度も真っ白な世界にのぼりつめた。