助手席にピアス
朔ちゃんと莉緒さんの二次会は、駅前のビルの最上階にあるレストランで開かれることになっている。
息を切らせながらエレベーターに乗り込むと、時間を惜しむように十階のボタンを押す。そしてようやく到着したエレベーターから降りると、二次会会場のレストランのドアを勢いよく開いた。
四方をガラス窓に覆われている、このレストランからの眺望は抜群。でも、遠くに見えるスカイツリーに気を取られる余裕すらなく、お店の片隅にいた桜田さんに駆け寄った。
「遅くなってすみません」
「いや、大丈夫だ。ほら、手を洗って来い」
「はい」
桜田さんに指示された通り手洗いと消毒を済ませ、エプロンと三角巾を身に着けると、早速ケーキの側面のデコレーションに取りかかった。生クリームが入った絞り袋で、模様を丁寧に描けば側面のデコレーションは終了。
次は、ケーキの上を華やかに飾る苺とブルーベリーとラスベリーの盛りつけだ。一見簡単なように見える作業も、バランスを考えながら配置をしなければならず、神経を使う。
そして、最後にベリーで埋め尽くされたケーキの縁を、生クリームでデコレーションすれば完成。
ラブラブな今日の朔ちゃんと莉緒さんのような、ハート型のウエディングケーキを目にしたら、さっき執り行われた感動的な結婚式が、頭の中でよみがえった。