助手席にピアス

「桜田さん。朔ちゃんと莉緒さんの結婚式だけど、すごく素敵だったの」

「そうか」

桜田さんの切れ長の瞳が弧を描く。

「うん。きっと早百合さんも朔ちゃんのことを祝福しているよね」

「ああ、きっとな」

慌ただしく過ぎ去ろうとしている一日の中で、今だけは時間を忘れて桜田さんと共に、今はこの場にいない早百合さんを偲んだ。でも、そのひと時も幹事さんたちの問いかけで終わりを告げる。

「あの、ケーキは完成ですか?」

「はい。どちらに配置しますか?」

「じゃあ、あそこに」

桜田さんは幹事さんたちの指示に従いながら、ケーキが乗ったワゴンを移動させる。

ブッフェ式の料理に引けを取らない、このケーキのでき栄えに満足した私はガトー・桜で過ごした日々に感謝をするのだった。



挙式では純白のウエディングドレスを気品よく身に纏い、披露宴のお色直しでは、真っ赤なドレスをゴージャスに着こなしていた。そして二次会では、キュートな淡いブルーのミニドレス姿を披露してくれた莉緒さんは、間違いなく今日の主役。

どんなドレスも似合ってしまう莉緒さんの隣には朔ちゃんが寄り添い、仲睦まじい姿を見せつけられる。

友人や会社の人たちでワイワイ盛り上がる二次会の中、一番の盛り上がりを見せたのは、やはりケーキカット。

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