助手席にピアス
ふたりの幸せな一日に協力することができた私は、思わず涙ぐんでしまうほどの感動に包まれた。でも、それも束の間、切り取ったケーキをお互いの口に運ぶファーストバイトの様子に、笑いが込み上げる。
莉緒さんがカットしたケーキはとてもじゃないけど、朔ちゃんの口に収まらない大きさ。そのケーキのクリームを口の周りと鼻先につけた朔ちゃんの姿は、折角のイケメンも台無しだった。
誰もが楽しいひと時を過ごしている。そう思っていたのに……。
「あ~あ、雛が一生懸命に作ったのによ……」
琥太郎は不機嫌な様子を隠そうともせずに、子供みたいにムクれる。
「琥太郎、朔ちゃんと雛子さんが幸せなら別にいいの」
「そうだけどよ……俺、雛が作ったあのケーキ、早く食いたいんだけど」
せっかちなことを言い出す琥太郎が、とてもかわいく思えた私の胸がキュンと音を立てた。
「ファーストバイトが終わったら桜田さんと切り分けるから、待っていてね」
「……ああ」
この二次会が終われば、私は琥太郎に告白をすると決めている。
その時が、刻一刻と近づいていることを意識した私は、隣にいる琥太郎の横顔を熱く見つめた。