助手席にピアス

朔ちゃんと莉緒さんが結婚式を挙げた東京プリマホテルから私のワンルームマンションまでは、電車で三駅の距離。

土曜日の午後九時を過ぎたの電車は程々に混雑をしていて、必然的に琥太郎と身体が密着した。腕に琥太郎の温もりを感じた私の脳裏に浮かぶのは、さっきのエレベーターでの出来事。

もし男性が乗り込んでこなければ、きっとあのまま私と琥太郎は唇を重ねていたよね……。

琥太郎はお正月と同じ気持ちのまま、今でも私のことを好きでいてくれていると信じてもいいよね?

考えにふけっていると、慣れないヒールのせいで電車の揺れに身体が傾いてしまった。

アッと焦ったのも束の間、琥太郎の逞しい腕によって、バランスを崩した身体を支えられる。

「危なっかしいな。手すりに手が届かねえなら俺の腕に掴まってろよ」

「う、うん」

小学生の時はたしかに同じ背丈だったはずなのに……。

片手は電車のつり革を握り、もう片方の手には私の荷物を持ってくれている逞しい琥太郎の腕にしがみつく。

好きという思いを胸に抱きながら……。

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