助手席にピアス
せっかちに物事を進めようとする琥太郎の様子を目にした私の心臓は、さらに大きく鼓動を刻む。
でも、朔ちゃんと莉緒さんの二次会が終わったら、琥太郎に思いを告げると決めていたのは自分。だから私はある物をチェストの引き出しの奥から取り出すと、琥太郎の前にそれを置いて正座をした。
「雛、これは?」
正座をする私につられ、琥太郎も背筋を伸ばして正座をする。
「琥太郎。私、何度も自分でシようと思ったの。でも初めてだから怖いし、それに少しは痛いらしいし、もしかしたら血だって出ちゃうかもしれないんだよ? そんなのひとりじゃ絶対無理。だから琥太郎にシて欲しいの」
さっきまでは琥太郎とふたりきりになったことばかり気にして、緊張していたくせに……。
今は膝と膝をくっつき合わせ、琥太郎が背中を反らすほどの距離で詰め寄る。
「わかったから。雛、そんなエロい言葉ばっか、連発するなよ」
「エロ、い?」
「ま、まあな」
なにがどうエロいのか、私にはイマイチわからない。でも琥太郎が私のお願いを引き受けてくれてホッと胸を撫で下ろす。
そして、私が用意したその物を手にした琥太郎を見つめていたら、また違った意味でドキドキと高鳴る鼓動を自覚した。
そんな中、初体験に備えるために大きく深呼吸をする。それでも込み上げてくる不安は尽きない。