助手席にピアス
ピアスには忌々しい思い出しかない私が、今さらどうしてピアスを開けたのかと言うと……。
それはピアスの力に頼りたかったから。
だって、ピアスを開けたら運命が変わるって言うでしょ?
だから私は、そのピアスの力に頼って琥太郎との関係を変えてみたかったのだ。
でも、いざピアッサーを自分の耳たぶにあててみると、不安ばかりが襲ってくる。弱虫な私は結局、琥太郎に頼ってしまった。
琥太郎に今さら嘘など通用しないことは、私が一番よく知っている。だから私は、ずっと秘密にしていた思いを口にした。
「運命を変えたかったの」
「運命?」
「うん。もう琥太郎と幼なじみのままなんて嫌なの」
鏡の中の琥太郎にじっと見つめられた私は、その視線を避けるためにうつむく。そして恥ずかしい思いを自覚しながらも、琥太郎に告げようと思っていた気持ちを一気に吐き出した。
「私、幼なじみとしてじゃなくて、琥太郎のことが好きだってやっと気づいたの。だから彼氏と別れたし、バレンタインのチョコだって、あれは本命として贈ったものだから……」
正座をしたまま上目づかいで琥太郎をチラリと見つめれば、耳が真っ赤に染まっていた。そして、ようやく自分の思いを琥太郎に告げた私の頬も、真っ赤に染まっているはず……。