助手席にピアス
幼なじみでもある朔ちゃんと最後に会ったのは、確か一昨年のお正月に帰省した時。
初恋の人でもある朔ちゃんに、久しぶりに会える!
そう思うと、胸が勝手に高鳴り始めた。
おばあちゃんが亡くなったばかりなのに、不謹慎だよね……。
「でさ、そのうち兄貴から連絡が入るはずだから、その時に時間とかふたりで決めろよ。いいな?」
「うん。琥太郎、色々とありがとう」
完璧な段取りをするなんて、琥太郎のくせに生意気じゃない。
琥太郎に対して、つい強気になってしまう衝動を抑えつつお礼を言った。
「ああ、じゃあな。あっ、雛! 喪服持ってくるの、忘れんなよ」
「あっ! 忘れてた!」
「ったく、しょうがねえな。しっかりしろよ」
「そんな言い方しなくてもいいでしょ。じゃあね、琥太郎」
「あ、ああ」
忙しく琥太郎とのやり取りを終えると急いでクローゼットに向かい、喪服を取り出す。すると、琥太郎の言っていた通り、朔ちゃんからの着信が鳴り響いた。
「もしもし、朔ちゃん?」
「ああ、雛子ちゃん。久しぶり。琥太郎から聞いたよ。おばあさんのことは残念だったね」
朔ちゃんの優しい言葉は、おばあちゃんを失った悲しさを癒してくれる。
「うん……朔ちゃんにも迷惑かけてごめんね」