助手席にピアス
やがて、その不安は涙となって私の瞳から零れ落ち、気がつけば「おうちに帰りたいよぉ」と声を上げて泣いていた。
いつまでも泣き止まない私を迎えに来てくれたのは、大好きだったおばあちゃん。両親が共働きだったため、私はおばあちゃんに育てられたようなもの。
温かいおばあちゃんの手を握り、綺麗な三日月を見ながら家までの短い道のりをゆっくりと歩けば、不思議と不安が消え去った。
幼い頃も、大きくなってからも、おばあちゃんはいつも優しく私のことを見守ってくれていた。
パティシエになるために上京すると言い出した私を一番に応援してくれたのも、おばあちゃん。それなのに私は、おばあちゃんの期待に応えることができなかった------。
懐かしいおばあちゃんとの思い出に、瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。
「雛子ちゃん。辛いね」
「……うん。あのね、私、おばあちゃんに謝らなくちゃ。応援してくれたのに、パティシエになることをあきらめてごめんねって、謝らなくちゃ」
零れ落ちる涙をハンカチで拭いながら思うことは、隣でハンドルを握るの朔ちゃんのことでも、彼氏の亮介のことでもない。
元気だった頃の、おばあちゃんの笑顔が走馬灯のように次から次へと浮かんでは消えていった。