助手席にピアス
Sweet*4
帰郷
平日の水曜日の午後の高速道路は、渋滞もなく順調。フロントガラスから見える遠くの山並みを見ると、地元に帰ってきたんだと実感した。
朔ちゃんが運転する車が実家前に停まり、助手席から下りる。するとツンツンと立ち上がる短い黒髪が特徴的な、ある人物が駆け寄ってきた。
「雛、お帰り」
「ただいま。琥太郎」
人懐っこい二重の大きな瞳を細め、少し厚みのある唇に笑みを浮かべる人物こそ、幼なじみの琥太郎だ。昔から変わらない笑顔を見ただけで、心がホッと和む。
「琥太郎、仕事は?」
「水曜日は定休日だ」
琥太郎は大学を卒業すると、地元の建築設計事務所に就職をした。
「あ、そっか」
並んで話をしていると、琥太郎の身長が、お正月に会った時よりもまた伸びたような気がした。
いったい、いつまで成長期するつもりだろ……。
骨太なガッシリ体型なのに、羨ましいほど顔が小さい琥太郎を、半ばあきれて見上げる。すると琥太郎は私からプイッと視線を逸らすと、何故かうつむいてしまった。
「琥太郎?」
「雛。早くバアちゃんに会ってやれよ」
「うん。でも荷物が……」
「そんなの俺が出しておいてやるから」
琥太郎は足早に車の後方に移動する。
「じゃあ、お願い。あっ、朔ちゃん、送ってくれてありがとう」
「ああ、またね」