助手席にピアス

親戚や近所の人達で溢れ返っていた実家も落ち着きを取り戻し、お母さんを手伝いながら掃除をして、お父さんの運転で買い物に出かける。

実は、私は前々からパティシエになると夢見たことを……。

そして、パティシエになることをあきらめたくせに、東京で勝手に就職してしまったことを……。

両親と祖父母に対して、後ろめたく思っていた。

地元の短大に進み、普通に地元の企業に就職をしていれば、結婚するまで今日のような穏やかな日々を実家で過ごしていたはずだ。

自分は親不孝だ……。

そう思いながらも、東京を離れて帰郷する気にはなれない。

自分勝手な娘でごめんなさい。

心の中で謝りながら、せめて今日だけは、と感謝の意味も込めてキッチンに立った。

東京で、きちんと自炊している姿を両親に見せるためにも失敗は許せれない。そんな大袈裟なことを考えて作った料理は、肉じゃが。

ほっこりと味が染み込んだ肉じゃがの味は上々。両親はもちろん、元気のなかったおじいちゃんが喜んでくれたことがなによりうれしかった。

そしてデザートは、なめらかプリン。卵と砂糖、牛乳と生クリームを混ぜてオーブンで焼くだけのお手軽レシピがお気に入り。

居間でテーブルを囲みながら、テレビを見る。そんなゆったりした家族水入らずの時間を、久しぶりに過ごした。

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