助手席にピアス
朔ちゃんに恋をしていると自覚をしてからの私は、朔ちゃんに会うだけで、心臓が破裂しそうな勢いでドキドキと高鳴った。
そして朔ちゃんに会えない日が続くと、おばあちゃんが買ってきてくれたお団子も、あまりおいしいと思えなかった。
私の日常は、朔ちゃん一色に染まる。
そんなある日の下校時。私は密かに悩んでいたことを思い切って琥太郎に打ち明けた。
「ねえ、琥太郎? 朔ちゃんが喜びそうなプレゼントってなんだと思う?」
こんなことを聞いたのは、朔ちゃんの誕生日が一週間後に迫っていたから。
「さあ、知らね。兄貴に直接聞けばいいだろ?」
「ダメだよ! それじゃあ、サプライズにならないもん!」
一緒に暮らしている琥太郎だったら、朔ちゃんがなにを欲しがっているのか知っていると思ったのにな……。
いい情報を得られなかったことに、ガックリと肩を落とす。すると眉根を寄せて、珍しく神妙な顔をしている琥太郎に気づいた。
「琥太郎、どうしたの?」
「え? ああ。雛……兄貴のことなんだけどさ……」
「うん。なに?」
「実は兄貴にはさ……」
琥太郎が重い口を開きかけた時、背後から大好きな声が聞こえた。
「雛子ちゃん。今帰り?」
「あっ! 朔ちゃん!」
朔ちゃんとバッタリ会うなんて、超ラッキー!
少しの時間でも朔ちゃんと一緒にいられることがうれしくて、琥太郎がなにを話そうとしていたかなど、あっという間に忘れてしまった。