助手席にピアス
お財布の中にあるのが福沢諭吉だったら、きっと素敵なプレゼントが買えるのに……。
青い顔をしている野口英世を恨めしく見つめても、千円札が増えるはずがない。
結局、少ないお小遣いでは、立派なプレゼントは買えないと判断した私は、朔ちゃんの誕生日にクッキーを焼くことに決めた。
そして迎えた朔ちゃんの誕生日当日。学校から帰宅すると、早速クッキー作りを開始した。
でも、焼き上がったクッキーをひと目見た途端、愕然としてしまう。
どうして……?
温度調節を間違え、炭のように真っ黒になってしまったクッキーを見つめながら涙を堪える。
でも、ここであきらめるわけにはいかない。だって今日は、一年に一度しかない、朔ちゃんの誕生日だもん。
気を取り直して、また一から生地を捏ねて、ようやく納得のいくクッキーが焼けたのは、午後八時を過ぎた頃だった。
家に朔ちゃんがいるのか確認をするために電話をかければ、聞き慣れた声が受話器越しに届く。
「琥太郎? ねえ、朔ちゃんいる?」
「兄貴なら、さっき家を出たばかりだけど」
「さっきって、じゃあ、まだ近くにいるよね? ありがと」
「あっ、雛!」