助手席にピアス
「雛が作ったものなら、どんなものでも俺が喜んで食ってやる。だから雛……もう泣くなよ」
「……琥太郎」
こんな慰め方って……あり?
失恋したばかりだというのに、なんかうれしくて、涙が出ちゃうよ……。
悲しみの涙がうれし涙に変化したのを見られたくなくて……私は琥太郎の広い胸に頬を寄せて甘える。
「ねえ、琥太郎? 私が失恋したら、また慰めてくれる?」
「ああ。だから雛、もう泣くなよ」
「……うん」
朔ちゃんに失恋した時に交わした、この約束通り……。
密かに恋焦がれていた一つ年上の鈴木先輩が卒業した時も、高校一年生の時に、同じクラスになった佐藤くんに失恋した時も。
そして、私の上京が原因で山田くんと別れてしまった時も、琥太郎は『もう泣くなよ』と言って優しく慰めてくれた。------
亮介に浮気され、ひとりで泣いていた私を、琥太郎は昔と同じように優しく慰めてくれた。太郎の広い胸の中で泣くだけ泣いたら、スッキリして気分も落ち着く。
「で? なんで泣いていたんだ?」
学生時代から変わっていない私の部屋で、琥太郎は学習デスクのイスを引き出す。そしてイスを反転させると跨ぎ、背もたれに腕をつくと、その腕の上に顎を乗せた。