助手席にピアス
Sweet*5

失恋


「元気でね。きちんと戸締りするのよ」

「大丈夫だから心配しないで。おじいちゃんに、また帰ってくるからって伝えてね」


日曜日の午後一時。最寄り駅まで両親に送ってもらった私は、わざと明るく振舞い電車に乗り込む。

でも本当のところ、おばあちゃんが亡くなってしまった寂しさを抱え、彼氏の亮介の浮気に心を痛め、幼なじみの琥太郎とギクシャクしたまま東京に帰ることに、不安を感じていた。

しかし私のことなどお構いなしに、電車のドアは無情に閉まる。ホームで私を見送る両親の姿が徐々に小さくなっていった。

「お父さん、お母さん……」

お盆やお正月に帰省した時は、こんなに寂しくなかったのにな……。

不意に込み上げてきた涙を拭うと、東京へと続くレールをひた走る電車の揺れに身を任せた。



キャリーケースをゴロゴロと転がして、ようやくマンションの前にたどり着く。

「雛子、お帰り」

実家から帰った私を待ち受けていたのは、どこかソワソワとして落ち着きのない様子を見せる亮介だった。

「ただいま」

数日振りに亮介と顔を合わせた私の心臓が、ドキリと音を立てる。それは浮気をされても、やっぱり亮介のことが好きだという証拠なんだろう。

「雛子、話があるんだ」

そう言う、亮介を部屋に招き入れる。

何時に帰るかわからない私を、亮介はマンションの下で待ち続けてくれた。これって、早く私に会いたかったってことだよね?

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