助手席にピアス
亮介が心から反省をして、もう二度と浮気はしないと誓うのなら、今回は許してあげてもいいかな……。
仲直りのシミュレーションをしながら、アールグレイの紅茶を淹れる。柑橘系のさわやかな香りに包まれれば、話し合いもすんなりといい方向へ進むはず。
そう信じながら、紅茶の入ったカップをローテーブルの上に置いた。それなのに……。
「雛子、ごめん。終わりにしよう」
私はお利口じゃないけれど、言葉が理解できないほどバカでもない。でも今は、亮介の言葉が理解できなかった。
「終わりって、どういう意味?」
「雛子はかわいいから、すぐに新しい彼氏ができるって」
亮介は私の質問を上手くはぐらかす。
「新しい彼氏って……私は亮介が……亮介だけが好きなんだよ。今回の浮気だって許してあげるから、そんなこと言わないでよ」
亮介は正座をしていた足を崩すと、これ見よがしに大きなため息をついた。
今まで上手くいっていたし、浮気をされて裏切られたのは私の方だよ? それなのに、こんな態度を取られなければならないの?
涙が零れ落ちないように、唇を噛みしめる。
「許してあげるって……雛子にそんなこと言われる筋合いないから。それに雛子さ、俺と結婚したいと思っているだろ?」
亮介にプレッシャーをかけないようにと、結婚願望を隠していたつもりだった。けれど、その思いが簡単に見破られていたことが、恥ずかしい。