助手席にピアス
Sweet*6
不本意なデート
失恋してから数週間が経ったけれど、会社で亮介の姿を目にすると口から自動的にため息が出てしまう。
まだ燻り続けている亮介への思いを断ち切るには、やはり地元に帰るのが手っ取り早いのかもしれないな……。
そんな弱気な気持ちに支配され始めていた時、思いがけず朔ちゃんから連絡が入った。
「雛子ちゃん、元気?」
「朔ちゃん……それがね、元気じゃないの」
「そりゃ大変だ。だったら雛子ちゃんが元気になるように、僕とデートしない?」
クスクスと笑いながらデートに誘われたのは不本意ではあったけれど、大好きな朔ちゃんからの誘いを断る理由などない。
「うん! 朔ちゃんとデートする!」
被せ気味に返事をすると、朔ちゃんはまたクスクスと笑った。
紺色のワンピースに身を包み、八センチヒールをコツコツと響かせて、待ち合わせ場所に向かう。
でも、その途中でショーウインドウに映る自分の姿を見るために、何度も足を止めた。左右と後ろ姿を見ては、どこかおかしいところはないかと、確認を怠らない。
だって、久しぶりのオシャレはやっぱり楽しい。それに、年上の朔ちゃんに子供っぽいと思われたくないもん。
「よし、大丈夫」
自分に太鼓判を押すと、朔ちゃんと待ち合わせをした東京プリマホテルのカフェに急いだ。