助手席にピアス
Sweet*7
勘違い
「雛子ちゃん、着いたよ。起きて」
名前を呼ばれる声にハッとして目を開ければ、運転席から朔ちゃんが。そして助手席からは莉緒さんが振り返って私を見つめていた。
「私……寝ちゃったみたい」
「うん。起こすのが可哀想なくらいよく眠っていたね」
またしても子供っぽいところを見られちゃったな……。
クスクスと声を揃えて笑うふたりに、恥ずかしさが込み上げて頬が熱く火照り出す。赤くなった顔をふたりに見られたくなくて咄嗟にうつむく。すると、朔ちゃんは車のエンジンを切ると、ドアを開けた。
「雛子ちゃん、悪いけれど少し急いでくれないかな? 約束時間をすでに十分も過ぎちゃっているんだ」
「う、うん」
車の外に出る朔ちゃんと莉緒さんに続けば、街灯に照らされる閑静な住宅街が見えた。
「朔ちゃん、ここは?」
首を傾げる私の背中に、朔ちゃんの手が添えられる。
「目的地はあそこ。さあ、行こうか」
「……うん」
朔ちゃんが指で示したのは、角地に建っている二階建ての一軒家。淡いクリーム色の外観に、昼間なら日差しがたっぷりと降り注ぎそうな大きな窓が特徴的だ。
朔ちゃんの誘導に従って足を進めると、深いグリーン色のルーフに書かれている白い文字が読み取れた。
【ガトー・桜】
ガトーって言うくらいだから、この一軒家は洋菓子店ってことだよね?
でも朔ちゃんは、どうしてこんな場所に私を連れてきたんだろう。