助手席にピアス
大盛りのケーキって……。
上品な莉緒さんのイメージが私の中で、ガラガラと音を立てて崩れていく。
「違うからっ! もう、朔太郎ったらみんなが誤解するようなことを言わないで」
ほんのりと頬を桃色に染めながら反論する莉緒さんの様子は、女の私から見てもかわいい。
あっ、そうか。朔ちゃんは、莉緒さんのかわいい姿を見たいから、わざと意地悪なことを言ったんだ……。
朔ちゃんを見れば案の定、口角をニヤリと上げてクスクスと笑い声をあげている。愛しそうに莉緒さんを見つめる朔ちゃんの笑顔を見たら、チクリと胸が痛んだ。
「莉緒。ごめん、ごめん。それでどんなイメージか真澄に説明して」
莉緒さんはコクリと頷くと艶やかな唇に弧を描き、瞳をキラキラと輝かせる。
ひまわりのような莉緒さんの笑みにつられるように、私までも笑顔になってしまった。
泣きながらケーキを食べる人はいない。甘くておいしいケーキは、人を笑顔にする力があるんだ……。
ケーキの魅力を改めて再認識する。
「私が桜田さんにオーダーしたいのは、苺やベリー系のフルーツが零れ落ちそうなケーキです」
「なるほど」
莉緒さんの説明を聞いた桜田さんは、腕組みをしながら大きく頷いた。
白い生クリームベースのケーキの上に乗るのは、赤い苺とラズベリーと、紫のブルーベリー。