助手席にピアス
見た目も華やかで色どりも綺麗なケーキと共に、ウエディングドレス姿の莉緒さんの姿が頭に浮かぶ。
いいな。私もみんなに祝福されて、素敵な旦那様と手を取り合ってケーキ入刀したいな……。
ウエディングケーキについて話し合う三人の様子をぼんやりと見つめながら、いつになるかわからない自分の結婚式のことについて考えを巡らす。
ウエディングドレスのデザインは、裾がふんわりと広がったプリンセスラインがいいな。そして頭には光輝くティアラを乗せるの。それから……。
「雛子ちゃん、帰るよ」
「えっ?」
朔ちゃんの声でハッと我に返る。
「ボーとしていたけど、眠くなっちゃった?」
「そ、そんなことないからっ!」
相変わらず私を子供扱いする朔ちゃんに向かって、頬を大きく膨らませた。朔ちゃんの小さな笑い声を聞きながらイスから立ち上がると、厨房から出る。そしてドアベルとカランと鳴らして扉を開くと外へ出た。
「じゃあ、真澄。また来るよ」
「ああ」
私たちを店の外まで見送ってくれた桜田さんに向かって、朔ちゃんが軽く手をあげる。その横で莉緒さんが「失礼します」と頭を下げていた。莉緒さんの丁寧な様子を見た私は、慌てて頭を下げると、今日初めて訪れたガトー・桜を後にした。