助手席にピアス
Sweet*8
仲直り
翌日の日曜日。時計の長針と短針が十二を差すのを見計らって、ある人物にコールをした。数回の呼び出し音が鳴ったのちに聞こえてきたのは、少しだけ懐かしい声。
「もしもし、雛か?」
「うん。琥太郎、もしかして仕事中?」
「いや、今日は休み。で? どうした?」
私が勤めているハニーフーズは、土日祝が休み。でも琥太郎が勤めている建築設計事務所の定休日は水曜日。あとはシフト制で週にもう一日、休日を取ると聞いたことがあった。
だから、もしかして琥太郎は日曜日の今日も、仕事かもしれない。
そう考えた私は、お昼休みの十二時を狙って琥太郎にコールをした、というわけ。
「琥太郎、この前はごめんね」
「あ、ああ。俺も言いすぎた。ごめん」
「ううん」
おばあちゃんの葬儀のために実家に戻った時は、つい弱音を吐いてしまい、琥太郎とケンカになってしまった。あの時のことは、これでおしまい。
「それから、ごちそうさま」
「あ?」
「肉でも食って元気だせって、朔ちゃんから聞いた」
遠くから私を心配してくれていた琥太郎に、感謝の言葉が口から素直に出た。
「ああ、そのことか。で? うまかったか?」
「うん、とってもおいしかったよ。ピンク色の霜降りのお肉を、シェフが目の前の鉄板で焼いてくれたんだよ」
昨日の豪華なディナーを思い出しながら、琥太郎に自慢気に話す。