助手席にピアス
昨日は朔ちゃんが結婚してしまうことにショックを受けていたけれど……。
幼い頃から色々とお世話になっている朔ちゃんを心から祝福したいという気持ちが、沸々と込み上げてくる。
「琥太郎、私……」
自分の思いを打ち明けようとした時、遠くから小鳥がさえずるような、かわいらしい声が聞こえてきた。
「こうちゃん、いつまで話しているの?」
このツッコミどころ満載な声に、好奇心がくすぐられる。
「琥太郎! もしかして、今の彼女?」
「ま、まあな」
琥太郎に彼女がいるなんて、知らなかった!
どうやって出会ったのかとか、いつから付き合い始めたのかとか、聞きたいことは山のようにある。
でも、やっぱり、一番のツッコミどころはコレだよね?
「へぇ、琥太郎って彼女に、こうちゃんって呼ばれているんだ」
「うるせぇな。雛には関係ねえだろっ」
照れ屋な琥太郎は、きっと耳を真っ赤にしているはず。
中学二年のあの時と、同じように……。
------イケメンか?と、聞かれれば、『YES』と即答はできない。けれど格好良い朔ちゃんの弟でもある琥太郎は、決してブサイクではない。
野球部に所属していたため、坊主頭だったけれど背は高いし、口は悪いけれど本当は優しい琥太郎に、好意を持つ女子は少なくなかった。