助手席にピアス
その証拠に「ねえ、雛子って琥太郎くんと付き合っているの?」と聞かれたことが何度かある。
「まっさかぁ! 私と琥太郎はただの幼なじみだから」と毎回同じ返事をすれば「よかったぁ!」と満面の笑みを浮かべて安堵される。そして必ず「じゃあ、琥太郎くんに紹介して」という流れになるのだ。
「ねえ、 琥太郎。彼女欲しくない?」
「あ?」
「いい子、紹介してあげようか?」
私の部屋で、いつものように学習デスクのチェアに跨っている琥太郎に向かって、唐突に尋ねる。
「べ、別に雛に紹介してもらわなくたって、女には困っていねえし」
坊主頭のくせに、まるで遊び人みたいな言葉を口にする琥太郎は、間違いなく面白い。恋バナに弱い琥太郎をからかうのが楽しくなった私は、調子にのりまくった。
「ねえ、琥太郎は美人タイプとかわいいタイプと、どっちが好き?」
「か、かわいいタイプかな」
坊主頭を掻きながら、琥太郎は答える。
「じゃあ、髪の毛は長いほうがいい? それとも短い方がいい?」
「……おかっぱ」
「今どき、おかっぱ? 変わってるね?」
「うるせぇ」
精一杯の強がりを吐き捨てるように言った琥太郎は、チェアから立ち上がると大股で部屋のドアに向かった。