助手席にピアス
ベッドに仰向けに寝転がると、琥太郎の彼女についてアレコレ考える。
あれ? 私、どうして琥太郎の彼女のことがこんなに気になるんだろ……。変なの。
自分の不可解な気持ちに首を傾げていると、チェストの横に立てかけていた一冊のスケッチブックが目に留まる。
ベッドから起き上がり、スケッチブックを手に取るとペラペラとページをめくる。するとそこには製菓学校時代に課題として出されたケーキのデザイン画が、所狭しと描かれていた。
「へったくそ」
ケーキを作るのも食べるのも好きだけれど、デザイン画だけは苦手だったな……。
過去の自分が書いたデザイン画に文句を言いつつも、ページをめくる手を止めることができない。
そう言えば莉緒さんは、ショートケーキをベースにしたベリー系のフルーツが零れ落ちそうなウエディングケーキがいいって言っていたよね。
形は? ラウンド型? それともスクエア型? あっ、三段重ねのケーキも素敵だよね。
色鉛筆を持った手が勝手に動き出す。空白だったページが見る見るうちに、色鮮やかな数々のウエディングケーキのデザイン画で埋め尽くされた。
私が描くデザイン画は相変わらず下手くそ。でも二人を祝福する気持ちだけは、誰にも負けない。
琥太郎、私、決めたから! 朔ちゃんは私からのプレゼントを喜んでくれるよね?
新たな決意を固めた私は、ウエディングケーキのデザイン画が描かれたスケッチブックをじっと見つめた。