助手席にピアス
相変わらず、無愛想なんだから!
桜田さんの態度にあきれていると、彼がCLOSEのプレートを握りしめていることに気づく。
「え~! まさか、今ので売り切れ?」
思わず絶叫に近い声を張りあげてしまった私を、桜田さんは白い目で見つめる。そして、これが答えだと言わんばかりにCLOSEのプレートを、ドアノブに素早くかけた。
二週続けてガトー・桜を訪れたのに、またも“おあずけ”なんて、ショックが大きすぎるよ……。
力なく「嘘でしょ~」と呟くと、ガックリと肩を落としてうなだれた。
すると「おい、入れ」と、桜田さんに声をかけられる。顔を上げると、彼はクイッと顎で店内を指し示しした。言われるがまま素直に店内に足を踏み入れれば、やはりショーケースには、一点もケーキは残っていなかった。
桜田さんは「はぁ」と大きなため息を吐き出す私の横を通過すると、店内の奥に向かう。そして「おい、こっち来い」と私を呼び立てた。
彼の言う通り、店内の奥の厨房に入ると、前回と同じ無機質なパイプ椅子が用意されている。そこに腰を下ろすと、程なくして紙コップのコーヒーが差し出された。
でも今日は、それだけはない。なんと、桜田さんは私の前に、白いお皿に乗った黄金色に輝くロールケーキを置いた。