助手席にピアス
-----「雛子ちゃん。はい、これ。朔太郎君と琥太郎くんの分」
「おばあちゃん、ありがとう!」
ある日はあめ玉を、ある日は庭で採れた柿を。また、ある日はおせんべいを……といった具合に、おばあちゃんは、時々こうして三人分のおやつを用意してくれた。
保育園から帰ると、その日のおやつを握りしめて玄関の前に立つ。家の前の道路は小学校の通学路。ランドセルを背負った朔ちゃんが通るのを、今か今かと待ちわびる。
「朔ちゃん! お帰りなさい!」
「ただいま」
小学校から帰ってきた朔ちゃんのもとに駆け寄ると、手のひらを開く。
「はい、朔ちゃん。これ、あげる」
「雛子ちゃん、いつもありがとう」
朔ちゃんは私の目線に合わせてかがみ込むと、手のひらに乗ったおやつを受け取った。
「食いしん坊の琥太郎に全部盗られないようにね」
「ああ、気をつけるよ」
朔ちゃんは私が大好きな優しい笑顔を浮かべると、頭をポンポンと優しく撫でてくれた-----。
喜びとヤル気が、じわじわと胸に広がっていくのを実感していると、桜田さんは急にコックコートを脱ぎ始めた。
半袖から覗く意外と逞しそうな腕に、不覚にもドキリと心臓が音を立てる。
「送ってやる」
「え?」
「お前の家まで送ると言っているんだ」