助手席にピアス
「お前、本当におしゃべりだな」
「べ、別に私はおしゃべりじゃありません。桜田さんが無口すぎるんじゃない?」
笑われたお返しに、ちょっとだけ反抗的になってしまう。
「朔がお前のことを、かわいがる理由がなんとなくわかる」
「え? 朔ちゃんが私のことをかわいいいって?」
いつ、どこで、朔ちゃんが私のことを『かわいい』って言っていたの!?
期待に胸を膨らませると、運転する桜田さんの横顔をじっと見つめた。
「いや、そうじゃなくて……なんか、放っておけないっていうか、似ているというか……」
「似ている?」
「……独り言だ。気にするな」
『気にするな』と言われると、余計に気になるんですけど!
そう言い返そうとした時、すでに家の近所まで来ていることに気づく。
「あ、この先で降ろしてください」
「家はどこだ?」
「角を曲がった先のマンションです」
「なら、そこまで行く」
まだ、太陽が燦々と照りつけている昼間だというのに、マンションの前まで送ってくれようとする、律儀な桜田さんの横顔に思わず、琥太郎の姿を重ねてしまった。
どんな時でも、私のことを家まで送り届けてくれた琥太郎を……。