助手席にピアス
東京と地元との遠い距離を感じないほど、こんなに早く琥太郎にまで情報が流れたことに驚く。
「もう知っているんだ。琥太郎。私、朔ちゃんと莉緒さんに喜んでもらえるように頑張るから」
「ああ。俺も雛のケーキ楽しみにしているからな」
幼なじみの琥太郎の好きなケーキは、甘すぎないベイクドチーズケーキ。琥太郎の誕生日にチーズケーキを焼いてプレゼントしたら、すごく喜んでくれたっけ……。
「ねえ、琥太郎。彼女とどこで知り合ったの?」
「あ? なんだよ、急に……」
「いいじゃない。教えてよ」
琥太郎の言う通り、急な質問だと思った。
でも今日は琥太郎のことがとても気になるんだから、仕方ないじゃない……。
「……合コンで知り合った」
「へえ、琥太郎ったら、合コンなんかに行くんだぁ!」
「しょうがねえだろ! 会社の先輩に強引に連れて行かれたんだからっ」
中学と高校の時に野球部に所属していた琥太郎は、間違いなく体育会系だ。骨太な琥太郎と合コンというミスマッチさが、おもしろすぎる。
「それで、その中にかわいい子がいて、琥太郎から告ったの?」
「違-よっ! アイツの方から付き合って欲しいって……。そんなのどうだっていいだろ!」
相変わらず恋バナが苦手な琥太郎は今頃きっと、耳を真っ赤にしているはず。姿を見なくたって、琥太郎の様子は手に取るようにわかるんだから。