My sweet lover
「あのなぁ。お前みたいな男性経験ゼロのヤツに、男の生態の何がわかるんだよっ」


「ちょっ、社長。ひどいですよ、そんな言い方」


「その通りだろうが。

俺が言ってる事の方が絶対正しいぞ」


くー。


人の事、バカにしてーーー。


「とにかく決まりだ。

明日、知り合いの引越し業者に連絡するから。

お前は大家に連絡しとけよ」


「ちょっ、ちょっと、そんないきなり」


引越しって。


しかも、社長の家になんて…。


「決まり、なっ」


おいおいおいっ。


まだ引っ越すとは言ってない!


「社長、無理です。無理無理。

そんなの絶対出来ません。

私、絶対引っ越しませんからーーー」


必死で訴えたその時だった。


いきなり頭がグラリと揺れて。


私はソファの上に、押し倒されていた。


私に覆い被さる社長。


「ちょっ。えっ?」


な、何?この状態。


ち、近い。


近いんですけどーーー。


「お前、うるさい」


「は?」


「ちょっと黙れよ」


「…だって、いきなり引越しとか…」


「黙らないと、このまま唇を塞ぐ」


「……っ!」


社長のこの目…。


ほ、本気でしそう…。


私は唇をぎゅっと閉じた。


その直後、社長は目を細めてにっこり笑った。


「よし、いい子だ」


私の頭をぽんぽんと撫でるその手は、なんだかあたたかい。

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