My sweet lover
「あーそうだ。水沢」


「はい、なんでしょう」


うー、このやりとり。


いかにも上司と部下って感じだよね。


「家では“社長”って言うの、やめて欲しい」


「はい?」


「家では仕事の事、忘れたいんだよ」


「えー、でも…」


社長は社長でしょ?


他になんて呼べばいいのか…。


「夏樹でいいよ」


「えぇっ?」


そんな、いきなり呼び捨て?


「む、無理ですよ」


「無理でも何でもー。社長って言ったら、そのたびにペナルティだからな」


「ペ、ペナルティって?」


私がそう言うと、社長は怪しい目で笑った。


「何にしよ~かな~」


な、なんでそんなに嬉しそうなの?


絶対ロクでもないこと考えてる。


あーやだやだ。


「わ、わかりましたよ。呼べばいいんでしょ?呼べば」


「うん。じゃ言って」


ソファのヘリに肘をかけて、私の方へ身を乗り出す社長。


「な、なつ…」


社長が目を細める。


う、うぅぅ~。


「な、つき…さん」


「あぁ~っ?」


眉を吊り上げる社長。


「だ、だってー!そんなの無理ですよ。いきなり呼び捨てとか」


そんなのギャップがあり過ぎる。


「フン、まぁいいだろう。社長よりかマシだし。

いいか?社長って言ったらペナルティだからな?」


なんでそこまで念を押されなきゃなんないんだ!


私は心の中で社長にベーッと舌を出した。

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