My sweet lover
そんなわけで、私は今社長の車の助手席に乗っている。


助手席と言っても、お父さんの車とは違って右側に座らされている。


そう。社長の車は左ハンドルなのだ。


免許を持っていない私が右側のシートに座るのは生まれて初めてで、妙な気分だった。


静かな車内。


柔らかそうな半袖のシャツから見える社長の細長い腕は少し血管が浮き出ていて、それがやけに色っぽくて思わず目が釘付けになる。


社長の横顔をこっそり盗み見る。


社長が怒ってる時の顔は嫌いだけど、こうして普通にしている時の顔は結構好きかもしれない。


その少しタレ下がった目も、薄い唇も、上下する喉仏も、年上の男性という感じがしてやけにセクシーなんだ。


運転する姿って、そのセクシーさを助長する気がする。


なんか、ズルイな…。


社長は私をどこに連れて行くのかと思えば、郊外の大きなショッピングモールだった。


デートなんてそんな色っぽいもんじゃなくて、ただ単に買い物に付き合わされているといった感じだった。


社長は服や靴やその他身の回り品を、次々に買い込んでいた。


時々「これ、どう?」って聞かれるけど、よくわからなかった。


悔しいけど、何を着ても似合うし。


何時間か付き合わされ、さすがに疲れた私達は荷物を一旦車に置いて、お茶をすることにした。

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