My sweet lover
高く柔らかい声に振り返ると、私のすぐ後ろに綺麗な巻き髪をしたありささんが立っていた。


「夏樹君、由梨ちゃんも。偶然ね」


「どうした?ひとりか?」


社長が尋ねると、ありささんは後ろの方を指差した。


ありささんが指し示す方向を見ると、トレーにアイスコーヒーを2つ乗せて、こちらに向かってくる朝日さんの姿が目に入った。


「朝日君と一緒なの。朝日くーん。夏樹君と由梨ちゃんがいたー」


ありささんの言葉に驚いている朝日さんと、私はバッチリ目が合ってしまった。


「由梨ちゃん、ここ一緒に座ってもいい?」


にっこりと笑うありささんに、私はストローをくわえたまま2、3度頷いた。


私の隣にありささんが座り、社長の横に朝日さんが座る。


やだ。


ものすごく気まずい。


なんで偶然会っちゃうかなあ。


「どうしたの?お前ら今日仕事は?」


私が心の中で思っていた事を、社長が二人に尋ねた。


「朝日君がね、9月から木曜の午後の講義がなくなったの。私はそれに合わせて今日は有給をとったの。
久しぶりに平日のショッピングモールに来てみたくて」


「へぇ…」


社長は興味があるんだかないんだか、力のない声でつぶやいた。


「夏樹君達はどうしたの?もしかしてデート?」


ありささんの言葉に、ドキッと心臓が跳ね上がった。


「あ、いや。ちょっとお店で必要なものがあって。コイツに買い物付き合ってもらってたんだ」


社長ってば、あっさり嘘ついちゃったよ。


でも朝日さんの手前、デートなんて思われると困るし、社長もありささんに変に誤解されたくないんだろうな。

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