My sweet lover
「それは…、ごめんなさい。
その選択肢はないわ…」


ありさはゆっくりだが、ハッキリとした口調で言った。


その言葉に胸がチクリと痛んだ。


「どうして…?」


戸惑いつつも尋ねてみると、ありさは大きく息を吐いた。


「夏樹君は私の大切な友達。

それ以上の感情を持つのは難しいわ」


「ありさ…」


「ごめんね…、夏樹君。

でも嬉しいよ。ずっと思っていてくれたこと。

本当に……ありがとう」


ありさが俺の顔を真っ直ぐに見つめている。


あの頃と変わらない綺麗な瞳で。


なんだろう。


悲しいはずなのに、そこまでつらくない。


かえって、何かつかえていたものが外れたみたいにスッキリしている。


「ううん、よかった。言えて本当によかった。

これで俺もやっと前に進めそうだよ」


俺がそう言うと、ありさが目を細めて笑った。


「ねぇ、夏樹君」


「ん?」


「今度は出遅れちゃダメだよ」


「え…?」


「好きな人が出来たら、こんなに時間をかけずに、すぐに伝えなきゃダメだよ?」


ありさが綺麗な顔で笑う。


「そ、うだな。
俺、時間がかかり過ぎだよな」


自分でもおかしくて笑ってしまった。


「そうだよ。教訓にしてね」


傷つくのを恐れて、こんなに時間をかけてしまった。


「ありさ、ありがとな。

俺が初めて本気で好きになった人が、ありさで良かったと思う」


「……こちらこそ、ありがとう。

ずっと、友達でいてくれる?」


「あぁ、もちろんだ」


ありさを思い続けた、長い長い7年間。


俺は今こうしてやっと、終止符を打つ事が出来たのだった。

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