My sweet lover
「それにしてもお前、趣味が悪いなー」


「えぇっ?」


「あんなヤツのどこが良かったわけ?」


「ちょっ、どういう意味ですか!」


し、失礼しちゃうな。人の昔の恋をバカにして。


「見ただろ?アイツのあの情けない顔。
少しは何か言い返して来るかと思ったのに、すっかり怯みやがってよー。
なーんの手応えもねぇんだから、つまんねーよなー」


う、うーむ。


確かにあの顔は……。


「ぷっ」


「お?何笑ってんだ?」


「だってホント。ふふ。面白かったです。あんな深田君、初めて見ました」


深田君のなんとも言えないあの歪んだ顔を思い出して、私はクスクス笑ってしまった。


あんなに好きで振られた時はすごく泣いたのに、おかしくて笑えるようになったなんて、まるで嘘みたいだ。


「良かったな。アイツの鼻を明かせて。

今頃、後悔してんじゃねぇの?

お前を振るんじゃなかったーって」


「社長、すごかったです。

今まで見た中で一番カッコよかったです。

あの、ありがとうございました…」


本当にすごく素敵だった。


本当の彼氏じゃないけど、あんなふうに言ってもらえてすごく嬉しかったし、スッキリした。


「……。

お前さ、笑ってろ」


「はい?」


「お前、全然笑わないだろ?笑うと可愛いよ」


え…?


「だから、いつも笑ってろ」


社長がそう言って目を細めるから、トクンと心臓が優しい音を立てた。


社長はズルイ。


そうやっていつも、私をドキドキさせるんだもの。


ドキドキしちゃいけないのに…。


私には、朝日さんがいるのに……。

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