My sweet lover
小一時間ほどして、食事とお会計を済ませた二人が席を立った。


お見送りしようと足早に出て行くと、社長もいつの間にか近くに来ていた。


「今日はありがとな」


社長が笑顔には及ばない程度に口角を上げる。


「夏樹君、また披露宴の相談に来るわ」


ありささんの言葉に、社長が「ああ」と頷いた。


「由梨ちゃんもありがとう。キミはよく働くね。感心したよ。また会おうね」


朝日さんに綺麗な笑顔で言われて、頬が熱くなるのを感じた。


「じゃあまた。ご馳走様」


そう言って、二人は仲良くお店を出て行った。


その後ろ姿は、恋人という名の絵画のように美しかった。


しばらく立ち尽くす私と社長。


う…。なんなんでしょ、この沈黙。


なんだか気まずくて、静かに立ち去ろうとしたその時だった。


「お前、今日残業しろ」


私の頭上に響く社長の低い声。


「は?」


「は?じゃない。はい、だろ?」


「は、はい…」



えーーー?


なんでそうなるのーーー?

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