My sweet lover
私達ホールスタッフの勤務時間は、基本10:00~22:00となっていて、その間で少し時間をズラして勤務する早番と遅番がある。


早番は開店前の準備から出社し、遅番はランチタイムのピーク時から閉店まで仕事に入るのだ。


今日もランチタイム・ディナータイム共にお客様でいっぱいだった。


ディナータイムには社長自らお店に出て来る事がたびたびあって、常連のお客様と会話をしたり、ワインの説明をしたりしてサービスの向上に努めている。


店内を動き回っていると、なぜか社長とよく目が合った。


以前は目が合っても一瞬でそらされていたのに、この頃は目を細めたり、口角を上げたりしてくれる。


こんなふうに社長に見ていてもらえることが、私はとても嬉しくて、心があたたかかった。


ラストオーダーも終わり最後のお客様が帰られると、私はクローズの看板を出しロッカー室へと向かった。


アルバイトの子達と一緒に、おしゃべりしながら着替えている時だった。


私のカバンから着信音が鳴った。


「はい」

 
『由梨ちゃん?』


この声…。


「朝日さん?」


『由梨ちゃん、まだ仕事中?』


「いえ、もう終わりました。今着替えているところです」


『今からお店に行っていい?』


「え…?」


『大事な話があるんだ…』


大事な話…?


私はわかりましたと返事をして、電話を切った。


なんだろう?


大事な話って…。

< 224 / 380 >

この作品をシェア

pagetop