My sweet lover
ありさとの別れを惜しみながら電話を切ると、俺は仕事もそのままに店を閉めた。


駐車場に行くと、もう二人の姿はなかった。


ふとお店の壁を見ると、水沢の自転車がポツンと残っていた。


自転車のハンドルになんとなく触れてみる。


ここに自転車があるって事は、水沢は朝日の車で行ったんだな。


俺は自分の車に乗り込んだ。


エンジンをかけ車を発進させると、真っ直ぐにマンションへと戻った。


 

鍵を解錠し、ガチャンと自宅の扉を開ける。


「ん?」


玄関に置かれたカラフルなヒモのついたスニーカー。


水沢、いるのか?


俺は廊下を走ってリビングへと向かった。


一度呼吸を整え、カチャンと静かに扉を開けると。


俺のソファに座る水沢の姿が見えた。


「おかえりなさい」


にっこり笑う水沢。


「お、おう。ただいま」


ぎこちなく答えれば。


「社長、お話があります」


水沢がスッと立ち上がった。

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